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■「あの頃はアオかった」KagiStar事件簿File10

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 ヤクザの事務所と恐喝と

ある日のこと、ぶっきらぼうな感じの中年男性から鍵交換の依頼電話を受けました。
「玄関の鍵を交換してほしいんだけど」
「防犯性の高い鍵に交換したいということですか?」
「防犯性?ま、そうだな防犯なんとかっていうの方がいいな」
「それでは、いついつ伺いますが、いらっしゃいますか?」
ああ、俺はいないけど、若い衆がいるから、行けば分かるようにしておくよ。

若い衆?なかなか普段聞かない言葉ですが、まだ嗅覚の発達していない私は素直に現場へ向かいました。

殺風景なマンションの一室に着くと、チンピラ風のお兄ちゃんが出てきました。
「ああ、親方から聞いてますよ。鍵を交換するんだね。」
親方だとか若い衆といった言葉から、このときは職人の寮なのかと思いました。実際2DKほどの間取りには、物音からしてお兄ちゃんが3,4人いるようです。
シリンダー交換をした後、支払いはどうするのかと聞くと、金はないから親方に電話してくれ、と言われました。
親方に電話をすると、
今は遠く離れた所にいるんで、またいついつ来てもらえるかなあ
と言います。こりゃ面倒くさくなりそうだと思いながらも後日訪問すると留守でした。

その後何度携帯へ電話しても、つながらなかったり、つながってもいつ事務所に戻れるかはっきりしない、の繰り返しでした。
振込みしてもらうように伝えても、適当な理由をつけて応じません。

事態が進展しないまま3週間が過ぎ、支払う意思がないと、頭にきた私は再度現場へ向かい、インターホンを鳴らしました。
先日とは違う若い衆2,3人が出てきました。
「親方に電話しても、支払う意思がないようなので、元に戻しますね」
「おいおい、何でそんな勝手なことするんだよ。親方に確認したのか?
「いや、電話してもつながらないし、支払う意思がないとしか思えないんで」
「支払わないって言ったわけじゃねえだろうが、大体新しい合鍵代金どうしてくれんだよ?おまえふざけてんのか」
「きちんと支払ってくれれば、こういう問題も起きないんですよ」
交換作業は終わりました。
「とにかく親方に言っとくからな、おまえどうなっても知らねえぞ」
------------------------------------------------------
翌日夜、親方から電話が来ました。ここから30分ほど会話が続きます。
おまえ、ずいぶん勝手なことしてくれんなあ!何考えてんだこら
「いつどこで支払ってくれるのか、いつまでたってもはっきりしないからですよ」
おまえよお、今までついてた鍵はピッキングとか何とか危ない鍵だって言ってたよなあ、
もしそれで泥棒に入られたら、どうすんだよ、おまえ責任取れるのかあ?

「元々ついてた鍵に戻しただけじゃないですか。お金を払わないからですよ」
じゃあよお、もしあの部屋に1億の金があって取られたら、おまえ弁償しろよ、こら
街宣車まわして、一日中おまえの事務所の前でスピーカー鳴らすぞ、おまえ2度と営業できなくなるぞ。こら!」
●△×■!!!・・・・・・

こういう中途半端なチンピラの特徴は、同じ事を何度も何度も言い、もしもの話が多すぎます。
それから、言葉の最後によく”コラ”、が付きます。

とにかく、おまえもう一度事務所に来いよ。それできっちり話をしようじゃねえか

後日指定された日時に再度事務所へ行き、部屋に上がりました。
親方はもうすぐ帰ってくるらしく、ソファで待つように言われました。
部屋の壁にはヤクザの家紋のような額が飾ってあり、住吉会系幸平一家●●組と掛かれています。
そして伝言ボードには、妙なルールが書き込まれています。
”黒塗りのセルシオ・ベンツを見たら必ず声をかけろ”とか・・・
他にもいろいろありましたが、忘れました。

まぎれもないヤクザ事務所だと分かりましたが、腑に落ちません。
ヤクザ家業のお客さんも過去にはいましたが、そういう人たちは私達のような人間にはものすごく誠実で丁寧な対応をしてくれます。
私のような善良な一市民を脅すなんて、どう考えても中途半端なヤクザです。

同席した若い衆が鍵屋の仕事についていろいろ聞いてきます。年のころは20代前半でしょうか。
何度か親方の携帯へ電話していましたが、何時に帰ってくるかわからないようです。

結局1時間待たされて、親方も戻って来ないので
「申し訳ないけど、これ以上は待てません」
と伝えて帰りました。
帰りながら親方の考えを探ってみました。最初から直接会う気などなく、脅すことによって金銭か何がしかのものを得ようとしていたのではないかな、と思います。
その後一度だけ親方から電話が来ましたが、同じようなやりとりでした。こいつから金はむしり取れない、と判断されたんでしょうか、それっきりです。

鍵交換の目的は、何だったのかな?





















ヤクザ


















事務所
File01:  →おじいちゃんが死んでいた
File02:  →泥棒と間違えられたんです
File03:  →真っ黒なセルシオの乗った街金
File04:  →現場には誰もいない・・・
File05:  →強制執行と執行官
File06:  →トイレに閉じ込み1時間
File07:  →現金輸送車インロック
File08:  →民亊トラブルでサンドイッチ状態
File09:  →料金踏み倒して逆ギレ?
File11:  →ガセネタ小旅行
File12:  →酔っ払い客にはもう懲りた
File13:  →真夏の夜の腐敗臭

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