真夏の夜の腐敗臭
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熱帯夜の0時過ぎ、電話番号が0110で終わる着信が表示されました。
(ああ、警察か・・・)
警察から気楽な仕事が来ることはありません。
酔っ払いの家を開けるのか、連絡の取れない家を開けるのか、
まともな仕事ではないだろうと思いました。
はたして、予感は当たりました。
「腐敗臭のする部屋があってねえ・・・・出動してもらえますか?」
古い団地に住む独居老人と連絡が取れず、玄関ドアをたたいても応答がないらしい。
親戚などの連絡先を誰も把握できない状況だそうです。
警察官立会いなら法的には問題ないけど、決して気乗りする仕事ではありません。
極力、仕事内容の選り好みをしないようにしているので、とりあえず車に乗り込みました。
(ほとんどの鍵屋に断られたのかもな・・・)
交番前に到着すると警官5人ほど、刑事らしき人も2人いました。
「藤原さんだね?」
「ああ、はい・・・」
気乗りしない返事に気付いたのか、刑事が明るく返しました。
「おたくは開けるだけでいいんだからさあ、まあ頼むよ」
さすがに、警察だからこういうことは慣れてるんだろうなあ。
交番に隣接する団地エレベータへと向かう途中、不良少年の群がりに出くわしました。警官は夜遊びを注意しています。彼らから見ると、警官の塊の中で一人作業服を着た男は、きっと鍵屋には見えなかったでしょう。
ターゲットの玄関前に到着すると、少し刺激臭が鼻をつきます。こういう臭いは初めて。近隣住民から苦情が来るのも当然でしょう。
「じゃあ、開けていいんですね?」
「おう、頼むよ」
作業を始めると警官が一斉にビニール手袋をはめました。さらに一人がカメラのフラッシュを作業中数回たいていました。解錠シーンまで撮影するとは意外です。開業当初のカギスターなら心臓バクバクさせながらの作業だろうなあ・・・警官たちが自分の作業をまじまじとみる、目つきまで感じているほど、意外に淡々と作業をしている自分に気が付きました。やはり精神面においても場数が大事だなあと感じます。
作業中の緊迫した空気を嫌って、刑事にひとつ質問をしてみました。
「この臭いだと死後何日くらいたってるんですかね?」
「そんなに経ってないでしょ、1日2日じゃないの」
真夏だから、腐敗も早いというわけですね。
それにしても臭いがきつい。おえっとなるので、途中から口だけで呼吸をしました。
ドアが開いたことを確認するために、ドアを一瞬だけ5cmほど引っ張りました。腐敗臭がどっと漏れてくる。
「開きました」と刑事に伝える。
警官たちは玄関に入る前に靴にビニールを被せます。
部屋の電気をつけると、結果は予想通りでした。
若い警官は初めてなのか、鼻をつまみ、顔を若干歪めています。
ここから先は鍵屋には関係ありません。
カギスターも鼻をつまみながら、
「じゃあ、下の交番で待ってますので、御代お願いします。」
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独居老人の孤独死なんて、テレビで見る珍しい事件でないんですね。世相を感じる事件でした。人は生きながらにして死に向かっている。
自分の死に様はどうなんだろう、死ぬときにいい人生だったと
思えるのか、などと哲学しながらエンジンをかけるのでした。
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| File01: →おじいちゃんが死んでいた |
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| File02: →泥棒と間違えられたんです |
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| File03: →真っ黒なセルシオの乗った街金 |
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| File04: →現場には誰もいない・・・ |
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| File05: →強制執行と執行官 |
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| File06: →トイレに閉じ込み1時間 |
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| File07: →現金輸送車インロック |
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| File08: →民亊トラブルでサンドイッチ状態 |
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| File09: →料金踏み倒して逆ギレ? |
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| File10: →ヤクザの事務所と恐喝と |
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